虚空の中のカエル

会社の流し場、水を流すと「グエエエェェ」ってカエルのような鳴き声を出すのだ。
いつもは何も言わないけれど、水を流す時だけ「グエエエェェ」である。
あまりにもカエルそっくりなもので、「いるのか?カエル?」と思って蓋を取ってみたこともあるのだが、そこには虚空が広がるばかりであった。
ある日、あつあつのお湯を捨てたとき、ものすごく苦しそうに「グエエエェェェェ……」って鳴き声が聞こえてきたものだから、怖くなってシンクをトントンとノックしてみたりしたのだが、返事はなかった。
そんなこんながもう数か月続いていて、私はいるのかいないのかよく分からないカエルのことを思い続けている。
カエル、ああカエル。
いないならいないと言ってくれ。

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