目が覚めると、そこは見慣れない白い天井の下、俺はベッドで横になっていた。
風が頬を当たるのに気付き横を見ると、開いた窓がカーテンを揺らしていた。
窓の向こうでは、雑草伸び放題の中庭で黄色いドラゴンが寝ていた。
スズメたちが、黄色いドラゴン……ソラの上で小さな声で鳴きながら一緒にくつろいでいる光景は、どこか新しい世界の幕開けのようだった。
何か悲しい夢を見たような気がする。
だがその思いも、夢の内容を思い出そうとすればするほど遠くへと去っていき、すぐに真っ白になった。
ソラがいるならシオもいるはずだ。
そう思い反対側に首を回すと、いた、探すまでもなかった、俺のすぐ隣で椅子に座り、ベッドのはしに顔をうずめて寝るシオがそこにいた。
静かにそんなシオを見ていると、かすかにシオの寝息が聞こえる。
外ではまだスズメの鳴き声がしていた。
静かな時間が過ぎて行った。
ミドリやポチ太郎もいるのだろうか?
俺は周りを観察したが、俺の位置からはミドリもポチ太郎も見えなかった。
周りを見て分かったが、窓は欠けて、雑草が生えかけているが、ここは学校の保健室だ。
薬や医学書の詰め込まれた棚や、かつて保健の先生が使っていただろう机と椅子、ベッドを仕切るカーテンは今は空いて風に揺らめくままとなっていた。
あれから気を失った俺を、ここまで運んでくれたのだろうか。
あいつは、黒川はまた来ると言った。
惨敗だった。
何も俺はできなかった。
シオが来なかったら、死んでいたかもしれない。
力が欲しい。
皆を、シオを守れるくらいの大きな力が。
そんなことを考えながら、俺はしばらくシオの寝顔を見ていた。
その表情は安らかで、無防備で。
可愛いな。
俺はしばらくその寝顔を見ていた。
俺はこのシオを、魔王にしてしまったのだろうか。
軽はずみな俺の答えで、黒い月の向こうにある世界に行くことを決意させてしまったのだろうか。
俺は。
俺はシオに何ができる?
スズメの鳴き声と、シオの寝息だけが聞こえてくる。
シオは、まだ目を覚まさない。
こんな童話を思い出した、王子様のキスでお姫様が目を覚ます。
いや、だめだ、シオのことは好きだけど、まだ告白もしてない、シオは俺のことをただの友達としか思ってない。
俺は思わずブンブンと首を振ってしまったが、その衝撃で全身が痛みを思い出したように痛み出した。
「い……て」
うかつに出してしまったその声で、時間が動き出した。
「どうした!トク!痛いか!」
シオがびっくりしたように顔を起こしたのだ。
その声で、シオの隣にいたらしいミドリもびっくりしたようにピョンと出てくる。
どうやらシオの足元で平になって寝ていたようだ。
「どうしましたか!トクさん!シオさん!」
保健室の開いた扉の向こうで、ポチ太郎が顔を出した。
もしかして見張りでもしていたのだろうか。
そして。
部屋が影になったのに気が付き、おそるおそる窓の外を見ると、ソラの巨体はいつの間にか窓のすぐそばまで来て俺たちをじっと見ていた。
明らかに俺を心配しているような表情ではない。
お前、シオに何かしていないだろうな。
そんな声が聞こえてくるような視線でソラは俺を見ていた。
「な、何もしていないぞ俺は!」
俺は思わずソラにそんなことを言っていた。
「別にそんなこと気にしてないぞ」
見抜かれたようにシオにそんなことを言われ、思わず後ろを振り返りシオの顔を見てしまう。
そこには、ニコニコと笑うシオがいる。
俺はなんだか顔が赤くなる思いだった。
シオの前では下心も何もかも見透かされる、なんてこった、これはもしかするとピンチだ。
ミドリはよくわからないと言うように首を傾けて、ポチ太郎はうんうんと頷きながら言った。
「青春ですねえ」
空は今日も青空だった。
黒川たちの戦いが嘘だったようにも思えたが、体の傷はそれを覚えていた。
7日目の約束まであと5日。

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