戦ってみる?
ミドリと?
思わずミドリを見ると、ミドリは何も考えていないようにいつも通り風にそよいでいた。
次いでシオを見ると、自信満々の笑顔をしている。
「シオ、いくら何でも俺はミドリよりかは強いと思うぞ」
「そうか?どうだミドリ、トクがそんなことを言っているぞ」
シオにそう言われて、ミドリは草に覆われた短い両手らしきものを上下に振った。
もしかして、やる気なのか?
「どうしたトク、ミドリはやる気だぞ、もしかして怖いのか?ミドリが」
ジト目で笑いながら見え見えの煽りをするシオに合わせて、ソラが情けない奴だと言うように鼻息を吹いた。
「やるよ、やればいいんだろう、しょうがないな」
本当にしょうがない、そう思いながら裏庭の少し広い場所に移動する。
ミドリもその場所に合わせるように移動する。
「いいか?ミドリ、手加減をしなきゃいけないぞ、トクは戦い慣れてない」
シオはセコンドのようにミドリに助言する、それさえも俺の煽りにしか思えない。
「トクさん、大丈夫ですかい?ミドリさん、謎が多すぎてどんな攻撃をするか分からないですぜ」
俺のセコンドはポチ太郎だった。
「大丈夫、だと思うけどな。ポチ太郎まで俺が負けると思っているのか?」
「そんなことないですが、そんなところが、コウタロウに似てるんですよ……」
ポチ太郎は、不安を絵に描いたような表情をして俺を見上げる。
大丈夫。
ミドリは大人しいモンスターだ、そんなに激しい攻撃をしてくるわけがない。
「じゃあ、行くぞ!3…2…1…スタート!」
シオの合図が言い終わったと同時に、視界がいきなり地面一色になった。
何かに右足を掴まれてそのまま後ろに引っ張られて思い切り転んだんだ。
何が起こった?
足を見ると、地面から巨大な根が飛び出て俺の右足に巻き付いていた。
もしかして、これは。
ミドリがやったのか……?
ミドリに目をやると、ワーイ、と言うように短い両手を振っていた。
「あちゃー」
どこからかポチ太郎の声が聞こえてくる。
「ふっ、ミドリ、なかなかやるようだ……な!?」
言いながら、起き上がって体制を整えようとしたら、また足の根っこを引っ張られて転んだ。
再び地面一色になる視界。
どうしろと言うんだ。
俺は顔だけ上げてミドリを見る。
ミドリは嬉しそうに両手を上げて体を揺らしていた。
頭には一つ、花が咲いている。
本当に勝利に喜んでいるのかミドリ。
しょうがない、本当にしょうがない、少しだけ本気を出そう。
俺は集中すると、ミドリに向けて力を使った。
浮け!!
しかし、ミドリは浮かなかった。
おかしい、何でだ?
ミドリにだけこの力は使えないのか?
俺は精神を集中させて、ミドリを浮かせようと力を集めた。
ミドリの体が少しだけ、浮いた。
「うおおおお!」
力を集中することにより、ミドリの体は少し少し浮いていく。
その地面とミドリの間を見て、俺は愕然とした。
地面とミドリの間に、根が何本も張ってミドリを宙に浮かせるのを止めていたのだ。
「なんだそれは……」
俺は力が抜けてしまい、ミドリを浮かせる力を止めてしまった。
すとんと地面に降りたミドリは、今度は僕の番だよ、というように手を振る。
そして、俺の足に巻き付いたままの根を持ち上げた。
結果、逆さまになって宙に浮く俺。
「……負けたよ……」
ものすごい勢いで負けた。
ミドリに。
そっと地面に帰された俺は、体についた土を払い落とす。
ミドリは嬉しそうに跳ねている。
うう、くそ、なんてこった、俺弱すぎだろう、こんなんじゃあ黒川に勝てるわけがない。
いっそミドリが黒川と戦った方がなんぼかマシかもしれない。
そんな思いに打ちのめされていた俺の肩に手が置かれた。
見上げると、微笑んでいるシオの顔。
「ミドリの方が強かったな!」
その言葉は俺の胸をぐさりと貫いた。
「おいたわしや、トクさん……」
地面についてしまった俺のその手にポチ太郎の肉球の感触が伝わってくる。
うかつにもそれに少し癒されてしまう俺。
シオは、ポンポンと俺の背中を叩いて言う。
「でも、良いことが分かったじゃないか!」
「良いこと?」
「戦っている間は副作用が出ない」
シオに言われて、俺はやっとで気が付いた。
そうだ、俺は力を使ったにもかかわらず、自身に何も起こっていない。
「戦ってる間は、俺は副作用が出ない……」
何らかの強い感情により、俺の力の副作用は無くなるのだろうか?
その日の特訓はそこまでだった。
副作用の出ない条件という可能性を得ながら。
あと、ミドリは強い、そんな情報を得ながら。
五日目の夜は過ぎて行った。

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