目を開けると、そこには朝焼けの空が広がっていた。
それにしても体のあちこちが痛い。
コンクリートの床にそのままで寝たからだろうか、今度から屋上で寝る場合は体育館かマットか何か持ってきた方がいいのかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えながら起き上がると、シオはそんなこと知ったことかというように熟睡していた。
気持ちよさそうに大の字になって寝るシオと、そのそばで小山のようになって眠るミドリの姿に口元がほころぶ。
ソラは、目をつぶっているがその巨体から寝息は感じられない、寝てるんだよな?もしかしたら起きているのかもしれない、分からん。
まあ、いいや、まさか死んではいないだろう。
立ち上がり、屋上から校庭を見てみると、そこには昨日より多くのモンスターがいた。
グラウンドからはみ出し、学校外の公園や道路、飛べる者は電線や住宅、ビルの屋上などにも姿が広がっていた。
そういえば、元の世界に帰るまで一週間と言ったものの、モンスターたちは食べ物をどうしているのだろう。
少し怖いが、後でシオに聞いてみよう。
「さて」
校庭の時計は四時半を示している。
まずはトイレ、そして今日の分の飯の調達に行こう。
昨日コンビニから拝借しきた飲み物や食べ物類はまだ残っているけれど、何だか少し出かけたい気分だったのだ。
本当はシオ達が起きるのを待って一緒に行った方がいいとも思うが、このまま足手まといになるのも気が引ける。
このくらい一人でどうにかしたい。
俺はシオとミドリそしてソラを起こさないように忍び足でその場を離れると、まずは四階のトイレを目指した。
朝焼けに照らされた校舎は静かで、壁や窓がボロボロになった姿と相まって別世界を歩いているようだった。
トイレで用を足し、顔を洗った後、コンビニに向かおうとトイレを出た後、少し考えて用具入れからモップを取り出した。
掃除するのではない、武器だ。
こんなものが武器になるのだろうか、自分で苦笑してしまいそうになるが、ないよりあった方がいいだろう。
モップを片手に朝焼けの校舎の階段を降り、校舎を出る。
校庭にいるモンスターのうち何匹かは俺のことを見たが、それも一瞬のことで、すぐに視線を元に戻した。
シオの元にいる俺は敵じゃないと思ってくれているのだろうか。
それだとありがたい。
校庭を横切り、校門を出る。
早朝の空気は澄んでいて、人のいない世界がどこか神聖なものに感じられた。
このまま家まで帰り、必要なものを揃えるのもいいかもしれない。
腕時計、非常食、そうだな、懐中電灯なんかもいるかもしれない。
途中、カラスの鳴き声がどこからともなく聞こえた。
まだカラスはいるのだろうか。
もう食われつくしたか、この町から逃げてしまったと思った。
強いな。
そんなことを考えながら荒廃した朝焼けの町を歩いていると、そのうちボロボロになったコンビニの姿が見えてきた。
しかし、コンビニの中には先客がいた。
まだ暗い店内の中に入ると、どこからともなくボリボリと何かをかじるような音が聞こえてきたのだ。
何かいるのか?
手に持ったモップを両手で構える。
一旦学校に帰るか?
そんなことを考えたが、音の主はいきなり登場した。
咀嚼音がなくなったと思ったら、コンビニの奥から、小さな犬が軽快な足音を立てながら俺の前に現れたのだ。
「うわあ!びっくりした!」
飛び上がりそう日本語で言ったのは、俺ではなかった。
昨日ここで会った、顔はオッサンで体がマメシバのモンスターだった。
モンスターだよな?
確か犬の体とオッサンのような顔を持つ都市伝説の話を小学校のころ聞いたことがあるが。
それではないよな?
「何ジロジロ見てんだよ、見世物じゃねえぞ」
オッサン顔のマメシバは、顔をしかめる。
尻尾を巻いている、警戒しているのだろうか。
害のないモンスターであることを祈って、俺は構えていたモップを片手に置き換えると、コンビニの入り口に立ったまま両手を上げた。
「何もしない、お前こそ何だ?何で日本語が話せるんだ?」
オッサンマメシバは「ヘッ!」と笑った。
「おいおい、自己紹介はまずはあんたからだろう」
オッサンマメシバはそう言うと、足で顔を掻いた。
しょうがない、俺はそのまま自己紹介を始める。
「……青野徳也、トクだ。シオって人間の仲間で、あんたらを元の世界に帰すつもりで動いてる」
そう言い終えると、オッサンマメシバは少し真剣な表情をした。
「シオ……?そう言ったな?」
そう言ったオッサンマメシバは、心なしか一瞬だけ表情が曇ったような気がした。
でもそれも一瞬で、気のせいだったかもしれない。
「ああ……」
「へえ、あんたがねえ」
マメシバのオッサンは、そこまで言うと関心したように表情を緩めた。
少しは警戒を解いてくれたのだろうか。
マメシバのオッサンは、俺に近づくと、お座りのポーズで俺を見上げて言った。
「オレの名前はポチ太郎、言葉はこのヘンテコな世界に来た時出会った心の友に教えてもらいやした、トクさん、どうかお仲間に入れてくんせえ」
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